[前編]美味しさの裏に、岡山の料理旅館あり

複雑で繊細な味わいが特徴のNo.38。

缶詰の域を超えた味と盛り付けが実現できているのは、
製造を請けおってくれている方の誠意と努力があってこそ。
今回は、No.38 の製造を担っている岡山県の『しげや旅館』さんを訪ね、
いろいろなお話を聞いてきました。

No.38 のクオリティの秘密を知る旅へ、いざ。

 

豊かな山々と美しい渓流に抱かれた、岡山県の真庭市美甘。

古くは出雲街道の宿場町として栄えたこの地で、山菜や川魚、ジビエなどの旬の味わいを渓流山里料理として仕立ててきた『しげや』さん。


その美味しさは昔から評判で、ここでしか食べられない繊細な料理を求めて、著名人や政治家もお忍びでやって来るほど。


現在、旅館業はされていませんが、それでも変わらず『しげや』の料理を食べるために全国からファンがやって来ます。 

社長の笹尾 充さんが自ら山に入って採って来る山菜やきのこは、どれも希少なものばかり。アマゴなどの川魚は、清流の水を引き込んだ自然に近い環境で、きちんと管理しながら育てられたものを使っているので、味も鮮度も抜群です。 

「とにかくお客さんに喜んでもらいたい。その思いがいちばんにあります。だから、ここでしか食べられない美甘ならではの味をご提供するように心がけています」


そう語る笹尾さんは、山菜が自生する秘密の場所をいくつも知っているが、もっとたくさんの人に山菜を楽しんでもらえるようにと、休耕田を活用してタラやイタドリ、ヤマウド、ウルイなどの自然栽培まではじめたそうです。

山菜やアマゴをひとつずつ丁寧に下処理し、素晴らしい料理に仕立てていく笹尾さん。


自然と向き合い、素材が持つ力を大切にしながら、春夏秋冬、それぞれの時季に自然が紡いだ贅沢な恵みを私たちに届けてくれます。

厨房を覗いてみると、家族で経営されていることもあり、何とも言えないあたたかな空気が流れていました。


『しげや』の料理を一度でも口にすると、心の奥の方に忘れられない感動が灯り、必ずまた食べに行きたくなるのは、きっとこうしたあたたかみが料理にも反映されているからだと思います。


美食家が好みそうな贅を尽くした高級店よりも、よっぽど贅沢な時間がここでは過ごせます。 

ただ一方で、地域に目を向けてみると少子高齢化がどんどん進み、美甘に暮らす人々の母校である美甘中学校が2016 年に閉校。地場の産業も勢いを失い、若者が都会へ出ていく流れが加速していきました。


このままでは美甘がなくなってしまう。


そんな危機感をおぼえた笹尾さんは、「美甘のすばらしい恵みをもっと多くの人に感じてもらいたい。そして、美甘にかつてのにぎわいを取り戻したい」と考え、閉校した中学校を食品加工場として甦らせることに。


そして、旅館で提供している四季折々の味覚を、この工場で缶詰として製造・販売するために『株式会社しげや』を2017 年に設立。この瞬間、80 歳の起業家が誕生しました。

地域の若者を雇用し、アマゴやジビエを使った高級缶詰の製造・販売を開始した笹尾さん。


『しげや』ならではの繊細な味付けと盛り付けが施された缶詰はたちまち話題となり、メディアにも多く取り上げられて「ふるさと名品オブ・ザ・イヤーの地方創生賞(ヒト部門)」も受賞しました。

こうした確かな腕と実績、細部までこだわる料理人の視点は、通常の缶詰工場にはない独自のもの。


私たちのNo.38 も製造に細やかな手仕事が求められる「面倒な缶詰」なので、『しげや』さんだから今のクオリティを実現できているといっても過言ではありません。

明るく元気な工場長の杉本さんも「No.38 の製造工程はかなり複雑なので、いつも以上に細心の注意を払わないといけないんですよ」と苦笑い。


いつもありがとうございます。そして、ごめんなさい……。
そんなことを思いながら、後編ではNo.38 の製造工程や細かなこだわりについて、たっぷりお届けしていきます。

後編へつづく。

 

取材協力:
しげや旅館 / 株式会社しげや
ADDRESS:岡山県真庭市美甘3982  TEL: 0867-56-2019
株式会社しげやの缶詰ブランド「山の宝」
http://shigeya-mikamo.com/

 

 

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